映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

2008-01-01から1年間の記事一覧

2008年のベスト映画10本

今年1年間で私が観た映画は95本。 うち映画館で51本。 BS・CS放送とDVDで44本。ベスト1映画は、 クリストファー・ノーラン監督作品「ダークナイト」。 ヒーローであるはずのバットマンの苦悩が現代アメリカ の苦悩を象徴。 暗青が基調の美し…

WALL・E/ウォーリー

"700年もの間、たったひとりで働いてきた、 ゴミ処理ロボットのウオーリー。 いちばんの願いは、誰かと手をつなぐことー” ピクサーの最新アニメの主人公は、ロボット。環境汚染の結果人間が捨てたウォーリーの黙々とひとりゴミ処理をしている姿、虫やiPod音…

「エグザイル/絆」

ドアをたたく手のアップ場面。部屋の中の赤ん坊が泣く。「ウーは居るか?」。不安な母親のアップ。こんな場面から始まり、暗黒街の男たち4人が集合する。すさまじい銃撃戦、そして一時休戦となるが、説明ないままに話はどんどん進んでいく。はりつめた画面…

歌舞伎座さよなら公演

初めて歌舞伎座に行ったのは中学生の頃。父に連れられて天井桟敷である幕見席に。観たのは「白波五人男」。弁天小僧が呉服屋でいきな啖呵を切る場面のおもしろさ。傘をもって五人が勢揃いしての名せりふと名調子。そして最後には、舞台大道具の屋根での捕り…

NHK大河ドラマ 「篤姫」

毎週楽しみに見ていたNHK大河ドラマ「篤姫」が14日で終了した。最終回の平均視聴率が関東地区で28・7%、平均は、24・5%で、21世紀に入ってからの同ドラマで最高を記録したという。 「女の一本道」と「家族の絆」というわかり易いドラマの骨格が…

文楽 「源平布引滝」

昨日は国立小劇場で、文楽鑑賞。木曾義仲の誕生等を描いた時代物「源平布引滝」(げんぺいぬのびきのたき)の二、三段目が上演。17時開演、21時終演まで、たっぷり楽しんだ。 1等席5,700円。開演前に、「本日は録音します」とのアナウンスがある。指定され…

「容疑者Xの献身」

東野圭吾ファンなので既に原作を読んでおり、さらに推理ものだけに映画を見る気があまり起こらなかった。公開から10週目だというのに、いまだに映画興行成績ランキング・ベストテン入りを果たしているヒット作でもあり、やっと映画館に行く。 これが、「実に…

「トウキョウソナタ」

”ボクんち、不協和音。”このキャッチコピーが題名よりも映画の内容をよくあらわしている。4人家族の物語。リストラされたことを家族に言えない父(香川照之)。専業主婦の母(小泉今日子)。アメリカ軍隊に入隊する兄。こっそりピアノを習っているボク。そ…

「ハッピーフライト」

飛行場で働く地上スタッフ・整備士、航空機内のパイロット・キャビンアテンダントを手際よくコミカルに描く。 「スウィングガールズ」の矢口史靖監督が、2年間にわたって航空関係者を取材して脚本を書き上げたという。冤罪事件の取材を重ねて脚本に丹念に取…

原題とは異なる邦題の名作映画ベスト5

洋画の「邦題」について思うのは、昔の名画は味わいのあるものが多かった。「わが谷は緑なりき」「お熱いのがお好き」「太陽がいっぱい」「アパートの鍵貸します」「北北西に進路を取れ!」などは原題を生かして映画の内容をずばり示した名邦題だ。原題とは…

「ブロードウェイ♪ブロードウェイ  コーラスラインにかける夢」

ドキュメンタリー映画だが、実際のミュージカル舞台「コーラスライン」を観るのと同じ内容&同じ感動を味わうことができるという、稀有で優れた映画である。 ブロードウェイ・ミュージカルの傑作のひとつである「コーラスライン」は、ミュージカル舞台のオー…

映画のタイトル

前回のブログでコメントを頂戴した真紅さんではないが、私も最近の洋画における「邦題」をもっと大切にしてもらいたいという意見に賛成だ。私のブログでも、「イントゥ・ザ・ワイルド」は、原作邦題と同じ「荒野へ」のほうが良いとか、「僕らの未来へ逆回転…

「仕事道楽―スタジオジブリの現場」

"「好きなものを好きなように」作り続けてきた 創造の現場を、 世界のジブリ・プロデューサーが語る!”スタジオジブリの代表取締役プロデューサーである鈴木敏夫の聞き書き本。岩波新書。「風の谷のナウシカ」に始まり「トトロ」「もののけ姫」「千と千尋の…

「エターナル・サンシャイン」

「僕らのミライへ逆回転」のミシェル・ゴンドリー監督の代表作「エターナル・サンシャイン」(2004年)がNHKBS2で放映された。この映画、まったくの予備知識がないまま観たので、もうびっくり。映画でしか表現できない世界に、酔った。まいった。話はこ…

レッドクリフ PartI

私が最も好きな小説は、吉川英治著「三国志」。 30歳代に読んで、乱世の男たちの友情と死闘は、あまりに面白く,1巻読み終わるとすぐに次の巻が読みたくなり、すっかりハマって夜更かしの日が続いた想い出がある。 この小説の基になった「三国志演義」は、…

万城目学 「ザ・万歩計」

小説「鴨川ホルモー」を1冊読んでファンとなり、テレビドラマ「鹿男あをによし」も最後まで見てしまった万城目学の初エッセイ。こんな面白いエッセーを読んだのはは久しぶりだ。会社勤務時代、「オリーブの首飾り」を口ずさむ隣に座っていた人物や、自身が…

菊五郎・菊之助の「雪暮夜入谷畦道」

雪の降る寒い夜、熱燗で蕎麦を食べる。こんなシーンから始まる歌舞伎舞台「雪暮夜入谷畦道」。この外題がいいですね。「ゆきのゆうべいりやのあぜみち」と読む。幕が開くと、吉原に近い入谷村の蕎麦屋。看板には「二八」2×8=16だから、「二八蕎麦」は一杯…

「僕らのミライへ逆回転」

VHSビデオしか置いていない古くて小さいレンタルビデオ店を舞台にしたコメディーだが、あなどるなかれ、これが笑わせ、なかなかの感動作。 私の好きなジャック・ブラックが主演なので観に行く。ラブコメ映画の佳作「ホリディ」では、レンタルビデオ店で、…

「アイアンマン」

マーベル・コミックが立ち上げたマーベル・スタジオ製作による人気アメコミの実写化。今回新登場の「アイアンマン」は、軍需企業のCEOが自ら作ったパワード・スーツを着て、空を駆け、テロリストと戦うヒーローだ。 このパワード・スーツは、改良を重ね、…

「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス ディズニー デジタル 3-D」

”ティム・バートン監督のストップモーション・アニメの傑作『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』が3ーDで蘇える!”と聴いただけで、立体映画大ファンの私は、もう嬉しくて、ワーナー・マイカル劇場へ観に行った。 オリジナル版はもちろん3−Dではないので…

緒形拳さんを偲ぶ

俳優の緒形拳さんが亡くなった。 映画ですぐ思い出すのは「復讐するは我にあり」。今村昌平監督の1979年作品。私は当時テレビドラマ「必殺仕掛人」の梅安以来のファンだった。直木賞をとった佐木隆三の原作を読んで、主人公の殺人犯の人物像に興味がふくらみ…

「イキガミ」

戦時下の召集令状「赤紙」に対し、こちらは死亡予告書「逝紙(イキガミ)」。国家繁栄維持法という法律があるという現代日本が舞台の同名コミックの映画化。イキガミが来た3人の若者たちの人生最後の24時間を描く。 SFというかシュミレーションドラマの…

「おくりびと」

私がこれまで経験した葬儀では、葬儀社が納棺からお通夜、告別式にいたるすべての葬祭をとりしきっていたので、映画に登場するような、葬儀社とは別の「納棺師」というスタッフがいるということを初めて知った。 古来から伝わってきた伝統儀式のような様式美…

ポール・ニューマンを偲ぶ

名優ポール・ニューマンが亡くなった。代表作は、ずばり「明日に向って撃て!」(1969年)だろう。だが、ポール・ニューマンといえば、私は「明日に向って撃て!」以前の60年代作品が、強烈に焼きついている。 指を折られ、文無しとなりながら復讐戦に立ち向…

「アキレスと亀」

北野武監督の前作「監督・ばんざい!」は、思いつきだけで撮影に入ってしまうキタノ・タケシ監督が主人公で、監督自身の何をやってもうまくいかない焦りや恐怖を描いていた。こんな監督を「世界のキタノ」なんて言ってると世界は爆発するぞ!というような自…

文楽「奥州安達原」

国立劇場小劇場の文楽9月公演を、申し込み初日にインターネットで申し込んだが、第一部はすでに完売。第二部のほうを観ることができた。劇場はさすがに、満席。今回は人形遣いの吉田清之助が亡き師の名跡「豊松清十郎」襲名披露の舞台。人形遣いの芸名は、…

「イントゥ・ザ・ワイルド」

オスカー俳優ショーン・ペンが映画化権を10年越しで獲得し、自ら監督に専念した映画。これが監督4作目というが、私は彼の作品を初めて鑑賞。 大学を優秀な成績で卒業した主人公クリスは、貯金を慈善団体に寄付し、家族に何も伝えずに、ひとり放浪の旅に出…

我こそは ”七人の侍”

→東宝レコードのLP リアルサウンドトラック 七人の侍 NHKBS2では、”没後10年黒澤明特集”として全作品が放映されているが、関連番組「クロサワ アイカーブ特集 我こそは”七人の侍”」を観た。 この映画にのめりこんだゲスト達が語る、それぞれの「…

「グーグーだって猫である」

少女漫画家の麻子(小泉今日子)が13年暮らした猫のサバを亡くして、悲しみのなか、ある子猫と出会い、元気になっていく・・映画ジャンルに”親子の成長物語”というのがあるが、この親子は漫画家と子猫。ペットブームの昨今ペットは家族と同じ扱い。グーグ…

”七人の侍”はこうして作られた

昨日、NHKBS2で、「クロサワ アイカーブ特集”七人の侍”はこうして作られた」が放映された。黒澤明監督自身が出演した「七人の侍」の貴重なメイキング映像(1991年NHK製作)。冒頭、黒澤監督が製作意図を語る。「当時の映画は淡白なものが多い。観客…