ビリー・ワイルダー監督作5選
監督作5選(制作順)を選べば
「サンセット大通り」1950年
サイレント映画時代の大女優で過去の栄光にすがって暮らしている老女役のグロリア・スワンソンが不気味で妖気が漂う迫真の演技に圧倒される。
「昼下りの情事」 1957年
プレイボーイの大富豪(ゲイリー・クーパー)と初心な娘(オードリー・ヘップバーン)のラブコメ。
師と仰ぐルビッチへのオマージュ味を楽しむ。
「情婦」1958年
アガサ・クリスティの法廷劇。小道具の使い方が巧く、最後のどんでん返しシーンまで息つく暇もないサスペンスがたまらない。
「お熱いのがお好き」 1959年
マリリン・モンローが精神不安状態、33歳の時の映画だが、明るく楽しいラブコメに仕上がる。
伝説になったラストのセリフに、ぶっ飛んだ。
「アパートの鍵貸します」1960年
笑いとペーソスのバランスが絶妙のドラマ。
アカデミー作品賞ほか5部門受賞の、米で今でも繰り返し放映される
クリスマス映画の傑作。
第12作「翼よ! あれが巴里の灯だ」以後4年間は監督の黄金時代です。
ビリー・ワイルダー監督第8作~12作
ビリー・ワイルダー監督第8作「地獄の英雄」(1951)
事故現場に遭遇した新聞記者を通して騒動を客観的な描写力で描く。
カーク・ダグラスの演技も光る。
第9作「第十七捕虜収容所」(1953)
収容所内の人物描写が素晴らしく、最後まで飽きさせず、実に面白い。
パラマウント社での監督最大のヒット作となった。
波に乗る監督は、
第10作「 麗しのサブリナ」(1954)で、オードリー・ヘップバーンを、
第11作「七年目の浮気」(1955)でマリリン・モンローを主役に迎える。
同じ俳優を何度も使う監督は、二人の女優を後に再び起用していく。
マリリン作は、地下鉄通風口でのスカートを抑える有名なシーンがあるが、内容はイマイチの映画。
私がリアルタイムで監督作を観たのは
第12作「翼よ! あれが巴里の灯だ」(1957)
狭い操縦席内だけでドラマを作ってしまう映画は、初めての衝撃だった。
監督の名前を頭に刻み、以後監督作は欠ささず観るようになった。
2022年マイベスト映画5本
今年も映画館に足を運ぶことが少なくなりました。
なんとか選んだ2022年新作映画のベスト5です。
第1位「ベルファスト」ケネス・ブラナー監督
現代の不確かで分断の世界情勢に、あえて監督の少年時代を描いて家族愛に感動でふくらむ。
第2位「カモン カモン」マイク・ミルズ監督
様々な子供たちへのインタビューシーンとドラマが見事に融合。
第3位「クライ・マッチョ」クリント・イーストウッド監督
監督50周年・40作目の監督作にハズレなし。
第4位「トップガン マーヴェリック」ジョセフ・コジンスキー監督
トム・クルーズという大スターあっての正統なる続編。
第5位「さがす」片山慎三監督
予想を覆す語り口に、引き込まれ、離されて、生と死と今の現実を描ききる。
ビリー・ワイルダー監督第7作「サンセット大通り」
フィルム・ノワールの傑作であり、ワイルダー監督代表作の一本。
サイレント映画時代の大女優であったが今や老女となり過去の栄光にすがって名監督を召使にして暮らしている大邸宅にやってくる脚本家。
老女優を演じるグロリア・スワンソンが不気味で妖気が漂う迫真の演技。
召使を演じるエリッヒ・フォン・シュトロハイムの怪演。
この二人のキャラクターに圧倒されてしまうが、脚本家役のウイリアム・ホールディンが主役です。
スワンソンは、1919年セシル・B・デミルにみ見いだされて
人気スターとなり週100万ドル稼ぐスターであったが、映画公開当時は過去のひとで、彼女自身を投影したこの映画でカムバックした。
サイレント映画時代の大女優のカムバックといえば、日本でも。
戦前日活の大女優・入江たか子が1953年に大映「化け猫映画」で戦後初主演で大ヒットをとばした例もあり、なにか共通点を感じる。
撮影当時、実際のスワンソンはとても若々しかったため、化粧部は彼女が老けて見えるように白髪やしわを足したという。
死体が語るというファーストシーンから映画史上屈指のラストシーンまで、やはり上手い、堪能する。
ビリー・ワイルダー監督第6作「異国の出来事」
「異国の出来事」(原題「A Foreign Affair」1948年)は、敗戦国の日本では未公開。
私はレンタルビデオ鑑賞済で、今回Amazonプライムビデオで2回目の鑑賞。
連合軍占領下のベルリンを舞台にしたラブコメ。
冒頭飛行機の中から見える悲惨な街のベルリン。
監督自身が終戦後に見た衝撃的な様子そのままに,”ネズミがチーズをかじった跡のよう”というセリフで伝えている。
アメリカ視察団中のお堅い女性議員をジーン・アーサーが演じる。
彼女は戦前の人気スター。戦後は「シェーン」が有名ですね。
ベルリンに駐留している中尉(ジョン・ランド)、恋仲のクラブ歌手(マレーネ・ディートリヒ)との三角関係を描く。
この3人の中で、やはりディートリッヒの存在感が光る。
監督は後に「情婦」に起用して、圧倒的な存在感で悪女を演じさせている。
ここでもチャームポイントの脚線美で魅了。
キャビネット開閉を繰り返してのキスシーン、ラストでは椅子を使って男女逆転キスシーン。
小道具、ラストシーン作り、やはり上手い。
ビリー・ワイルダー監督第5作「皇帝円舞曲」
ユダヤ人だったビリー・ワイルダーは、大戦終了直後にベルリンを訪れ、家族がアウシュヴィッツで虐殺されたことを確信したという。
ワイルダー監督戦後最初の作品が、深刻な内容ではなく明るく楽しい作品を選んだ気持ちもわかる気がする。
日本でも木下恵介監督が戦争が終わったら明るく楽しい青春映画を撮りたいと切望していて1946年「わが恋せし乙女」を作ったように。
「皇帝円舞曲」(1948年)は、20世紀初めのオーストリアが舞台のミュージカル作品。
主演は、「ホワイト・クリスマス」などの数々のヒット曲を世に出しミュージカル映画にも多数出演し人気のビング・クロスビー。
やはり彼の歌声はこの映画でも聴きごたえ十分。
共演は、1941年にヒッチコック監督「断崖」でアカデミー主演女優賞を受賞していたジョーン・フォンテイン。
彼女の美しさはワイルダー監督初のカラー映画で引き立つ。
他にも犬の演技が見どころ。
この映画ポスター下部の写真を見れば、連想できますね。
後に「ミュージカルを作る才能がない」と語ったとおりワイルダーにとって唯一のミュージカル映画となった。