私がこれまで経験した葬儀では、葬儀社が納棺からお通夜、告別式にいたるすべての葬祭をとりしきっていたので、映画に登場するような、葬儀社とは別の「納棺師」というスタッフがいるということを初めて知った。 古来から伝わってきた伝統儀式のような様式美「納棺の儀」に、まず驚く。 最後には主人公は父親の死と直面し、さわやかな感動場面が用意されている。 まるで能舞台を観るかのようだ。 納棺師の仕事に就くことになる主人公を演じる本木雅弘が、死を見つめる誠実さをだして、文句なしの演技。 監督は「木村家の人びと」「病院へ行こう」などコメディーも得意の滝田洋二郎。 本年屈指のお勧め日本映画。
だからこそ故人と最後のお別れ場面が、すばらしい。
女装の学生、事故死の女性、孤独死・・
遺族たちの様子や対話だけから、死者のそれぞれの人生を浮かびあがらせる心憎い演出。
死から生へと繋がるラストのあとにも荘厳な「納棺の儀」エンドロール。
脇役陣の山崎努、余貴美子、吉行和子たちも実にいい味。
妻を演じる広末涼子は、最後の笑顔がいいので及第点か。
この映画は彼の代表作となるだろう。