映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「ルーム」

見知らぬ男に突然誘拐され、7年間監禁され続けた女性ジョイ。
その監禁部屋で生まれ、外の世界を知らないまま5歳になったジャック。

アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」の映画化。
小説は未読だが、上巻「インサイド」、下巻「アウトサイド」の構成で、映画も前半が監禁部屋内で母子の日常描写、後半が脱出して解放された後の描写となっている。
この構成が新鮮でドラマを効果的に語っていく。

この母子にとって、前半の監禁部屋内では誘拐犯だけが問題だったのだが、後半は、離婚していた両親との再会、マスコミ対応をはじめ、幼いジャックには多くの障害が待ち構えていて、母子の世界は一変する。
一気に降りそそぐ情報の嵐と環境変化に振り回されて混乱していく様は、情報多寡に振り回されている現代人そのものだ。
ひょっとして、悲劇の監禁部屋内で母子二人っきりで暮らせた生活のほうが生きている実感を感じていたのではないだろうか。

難しい演技が要求されるジョイ役のブリー・ラーソンアカデミー賞主演女優賞もうなずける迫真の名演技だ。
それと同等あるいはそれ以上なのが、ジャック役のジェイコブ・トレンブレイで、新しい世界に好奇の眼を向け、驚きながらも成長していく男の子を自然体で表現していることに驚く。
監督は、母国アイルランドでは評価が高いレニー・アブラハムソン。

日本でも、突然誘拐され2年後に逃亡した少女の事件があったばかりだったので、作り事ではすまされない強烈な印象を残した映画だった。