予告編を観たときは、トラと漂流した227日なんてウソっぽいお話だし、映像は美しいがCG作画ぽいので、あまり興味はなかったのだが、アカデミー賞作品賞候補にノミネートされたというので、映画館へと。
この映画の最大のみどころは、3D全開の素晴らしい映像だ。
水中場面の透明感ある”水”の3Dは初体験の感動。
ぜひ3D版で観てほしい。
テーマは、サバイバル、自然と人間。
次のみどころは、”ウソっぽいお話”。
映画は主人公が、その体験をカナダ人ライターに話すところから始まる。
今はやりの”これは実話です”とかではなく、ウソっぽいお話だからこそ、主人公が語る。
パイという名前のこと、3つの宗教を考えたこと、水泳を教わったこと、動物との体験・・
これらが漂流物語の進行に微妙に投影していく。
圧倒的な自然。
暴風雨は容赦無い、壮大な神々しい巨大クジラ、夜の海に輝くクラゲの美しさ。
そして無数のミーアキャットがいる島に漂着すると、不思議な”自然の摂理”に驚嘆させられる。と同時に、こんなことがあるの?と、
この主人公の語りは、ひょっとして”嘘なの”と思わせる。
最後、主人公の語りの相手は、沈んだ貨物船の保険調査員。
ここで語る話で、観客は戸惑う。
圧倒的な自然のなかで人間が見たものは?考えたことは?
サバイバルに必要なものとは、諦めない気持ちだと。
自然と人間。
共存するには、微妙な距離感が必要なのだろう。
トラと遭遇したときパイがとった行動は、小さな人工イカダをロープで繋げて離れること。それから徐々にトラに近づいていく方法。これが人間と自然(トラ)の共存。
だが、森に戻っていくトラは、人間(パイ)のほうを見ない。
自然を荒らす人間を見捨てるかのように。
観る人によっていろいろな解釈ができよう。
そんな難解な哲学的テーマに挑戦した監督は、「ブロークバック・マウンテン」でアカデミー賞監督賞を受けているアン・リー。