映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「塀の中のジュリアス・シーザー」

監督は、イタリアの巨匠ヴィットリオ&パオロ・タヴィアーニ兄弟。
兄弟で映画監督といえばコーエン兄弟が有名だが、タヴィアーニ兄弟のほうが先輩で、もう80歳を超えた。
壮大な叙事詩「カオス・シチリア物語」も好きだが、なんといっても「グッドモーニング・バビロン!」(1987年キネマ旬報ベストテン第1位)が最高作。
無声映画時代のハリウッドで、大作「イントレランス」の美術職人として参加する二人の男の物語。
アメリカ映画の父D.W.グリフィスの制作風景が素晴らしく、実写映画も挿入されて、まさに映画愛にあふれる傑作。
マーティン・スコセッシ監督のジョルジュ・メリエス賛歌「ヒューゴの不思議な発明」は同じモチーフでしたね。

タヴィアーニ兄弟監督の最新作「塀の中のジュリアス・シーザー」は、そのアイディアに驚く。
ローマ郊外にある刑務所のなかで撮影され、本物の囚人たちが演劇実習として「ジュリアス・シーザー」を演じるというもの。

オーディション風景から引き込まれる。
囚人たちの迫真の演技、個性の噴出を余すとこなくカメラが捉える。
これは演出に基づく演技なのか、ドキュメンタリーなのか。

演目がシェイクスピアだけに、“友情と裏切り”や”殺人への苦悩”が囚人たち自身の過去の経歴と重なりあって、それが顔に出てくるというところを的確に描写していく。

舞台「ジュリアス・シーザー」の真髄テーマを感じながら、演じる囚人たちの感情にも共感してしまうという、驚嘆する映画だ。

とにかく”百聞は一見にしかず”、としか言いようがない。