映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

原節子 15歳の“幻”映像「生命の冠」

月刊誌「新潮45」3月号付録のDVDで観た。

原節子が映画デビュー翌年(昭和11年)に15歳で出演した映画で、北方領土国後島でロケが行われた映画。
こんな作品が残っていたことを始めて知った。

原節子15歳の姿は、この映画の前に出演した映画「河内山宗俊」を私はすでに観ているので、改めての感激は少なかったが、とても15歳とは思えないほど大人びて、さすが美しく輝いていた。

監督は、内田吐夢で、戦後の「飢餓海峡」が代表作だが、
無声映画からトーキーに移行する1930年代に優れた
作品を創った監督。
戦前の代表作「土」は、日本映画にリアリズムを確立した作品で、映画として農民を描いた唯一のもので、観客はこの映画によって、はじめて農民の実態を観たといわれている問題作。その年のキネマ旬報ベストテン第1位に輝く。

この「生命の冠」は、「土」の3年前に創られている。
こちらは、農民ではなく漁民が描かれているので、観客は、樺太でのカニ漁やカニ缶詰工場で働く様子をはじめて観たのだろう。
主人公であるカニ缶詰工場経営者の苦悩を描きながら、「生命(いのち)の冠」というテーマを訴える意欲作だ。

若き内田吐夢監督の貴重な史料であり、また歴史的にも島の姿を今に伝える貴重なフィルムといえそうだ。