”私のキャリアはピークを終えた”と切り出し、”スピーチは手短にしたい”と言いながらも延々と話し、会場を笑いに包んだ。監督賞を受賞した「トム・フーパーのスピーチ」は、
脚本のデヴィッド・サイドラーは自身が少年時代に吃音を克服したことを披露した。そして母が、この作品こそ次回作と電話をくれたことも披露し、”オスカー像を母に捧げる”とし、”母の言葉は聞くべきだ”と締めくくった。
二人の含蓄ある受賞スピーチどおり、この映画は完成度が高く、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞の4部門受賞も納得の映画である。
ストーリーは単純。吃音症のジョージ6世(コリン・ファース)とその矯正指導する聴覚言語士(ジェフリー・ラッシュ)で、ドイツ開戦に際し国民に向けて行う「世紀のスピーチ」が成功するのかという話。まずはアイデアの勝利。二人のかけあいが最大の見所で、ユーモラスでも真剣、いくつかのエピソードを重ねながら治療は進み、戦争も近づく。
この展開が心地よい。
二人にからむ妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)の存在感も絶妙。王室や教会の推薦した権威ある聴覚言語士ではなく、経験だけが頼りの市井の聴覚言語士と身分を超えて友情がめばえる。
それに心打たれ、感動する。世代をこえて、”あらゆる人に観て欲しい!”というのが、「私のスピーチ」。
映画の題名は、「英国王のスピーチ」。