映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

小津安二郎監督「麦秋」

立秋を過ぎる頃になると、小津安二郎監督の映画が観たくなる。
そこで「麦秋」「彼岸花」「小早川家の秋」の3本を鑑賞。

これまで繰り返し観ている監督作品はヒッチコック監督なのだが、年齢を重ねると小津監督のほうが多くなっている。

麦秋」は、NHK・BSで録画しておいた「デジタル修復版」。
修復版にある英語タイトルは「Early Summer」。
そう、「麦秋」は麦の収穫期で季節的には初夏。夏の季語。

いつものように原節子の縁談をめぐるホームドラマ
原節子が「紀子」という名の役(同一人物ではない)を3作品にわたって演じた、いわゆる「紀子三部作」の2本目にあたる作品である。

紀子三部作での笠智衆の役が、
「晩春」では、原節子の父親役
東京物語」では、原節子のお舅役(写真前列にいる東山千栄子との老夫婦役)
だが、「麦秋」では、原節子の兄の役。両親よりも原節子の結婚を心配して動く役なので、ここは笠智衆登場ということか。「晩春」の父親役から一気に若作り。

紀子の結婚を機に、老夫婦は大和に隠居することになる。
映画のように3世代7人同居(写真)が普通だった時代に、はやくも核家族化の時代がくる予感が描かれているのだ。

ラストシーン、その大和の麦秋の風景描写が、いい。
さわやかな風と夏の訪れを感じさせながら、さわやかに映画は終わる。

小津作品は、落ち着いた画面構成、衣装や小道具の品の良さ、独特のユーモアに味わいがあって、観るたびに、またも”巧いな〜”と感嘆してしまう。

 

過去ブログ「小津監督の秋」
http://d.hatena.ne.jp/uramado59/20150919