映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

ヒッチコック監督作品の”ポスター”

これが明日から公開の映画「ヒッチコック」のポスター。
ヒッチコック監督(アンソニー・ホプキンス)と彼を支え続けてきた妻アルマ(ヘレン・ミレン)、主役ふたりの姿。
監督役の手には、「サイコ」で描かれたあの狂気のナイフが!
そうか、この映画は監督と妻の物語で、描かれる時代は「サイコ」か、ということが推測できる。
映画のポスターというのは、主演男優と主演女優のふたりが全面に出て、どんな内容の映画なのかひと目で判るように作られているものなのだ。

だが、ヒッチコック監督作品のポスターは、ちょっと違う。
監督が自ら作った予告編と同様に、監督の映画は、事前に
”決してネタを見せてはならない”のだ。
どんな映画なのか、サスペンス?、スリラー?、ホラー?、コメディー?
「それは、映画館で確かめて!」と言いたいのだ。


「サイコ」のポスターは有名。
監督が「映画が始まった後は誰も入場出来ません」と呼びかけているもの。
どんなに凄い映画なのか、興味津々。
一刻も早く観たくなる。
結果大ヒットとなった。






こちらの「サイコ」のポスターは衝撃的。
大女優ジャネット・リーの下着姿は、
”いまだかつてアメリカのスターが映画の宣伝でこれほど肌をあらわにしたことはなかった。”
ヒッチコックのイメージも映画界の常識も打ち破った。”
ほどの衝撃があったという。

この下着姿が、映画の開幕シーンであるからこそ、ポスターに採用したようだ。
トリュフォーは監督との対話で、”観客を方向ちがいの道に誘いこむ”開幕シーンと、述べている(ヒッチコック映画術)。







「鳥」や「めまい」のポスターだけを見ても、どんな映画なのか、まったく判らない。
監督の映画は、予備知識なしの状態で観るのが理想的なのだ。
絶好調のときに作られたこの2作。よほど自信があったのかもしれない。

「めまい」は、タイトル・デザインを担当したソール・バスのデザイン。


3D映画として作られた「ダイヤルMを廻せ!」では、”3D!”だけを強調。
グレース・ケリーの顔すら出ていない。



そうは言っても、主役ふたりを全面に売り出すポスターもある。
泥棒成金
こちらは”3D”ではなく、高画質の”VISTVISION”が中央に。







監督自身が唯一リメイクした最初の作品「暗殺者の家」では、
ピーター・ローレのアップひとりだけなので、原題タイトルの「知りすぎていた男」とは、彼に違いないと思ってしまう。
暗黒映画のようだけど? 彼が主役なの?
だが、ピーター・ローレは主役である「知りすぎていた男」ではなく「暗殺団の首領」なのだ。

予告編でも多く使われた”観客をミス・リードする”という監督得意の手法だ。



情報多寡の時代だからこそ、予備知識無しで、あっ!と驚く映画が観たい!


マイブログ記事から「ヒッチコック監督作品の”予告編”」
http://d.hatena.ne.jp/uramado59/20111105/p1