映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

ぞっとする絵

高校生時代に、一枚の絵を見て衝撃を受けた。

絵を見たとたん、くらくらと眩暈のような感覚がはしり、どきっとして、心臓の鼓動がはげしくなった。

その絵は、岸田劉生の描いた「切通しの写生」である。

美術の教科書で見て、知っていたはずなのに、なにか違う風景。

なんだ、なぜなんだ。

写生であって、写生でない。

崖に囲まれた道が盛り上がり、そそり立って、向こうの青空につきっささっている。

その体験後、何度かこの絵を見たが、この異様な感覚の理由がよくわからなかった。



日経新聞朝刊連載中の「ぞっとする絵・十選」で、この絵について脳科学茂木健一郎氏はこういう。

「一枚の絵との出会いが、新大陸の発見にも相当する経験の覚醒をもたらす。」

「この絵のぞっとするような迫力は、画家の目の産物である。」

「劉生の内なる衝動が生み出した不気味な魅力に瞠目させられる。」

この解説が、私の遠い過去の体験を想い起こさせてくれた。



絵の素晴らしさは、この一瞬の出会い。

美術の本でいくら見ても、本物を見なければ、価値はわからない。



日経新聞朝刊文化欄には、「ぞっとする絵・十選」のほか、作曲家デビューしたばかりの遠藤実私の履歴書」、いよいよ大戦に向かうテムジン「世界を創った男・チンギス・ハン」があり、いずれも面白く、毎日この文化欄を最初に読んでしまうこの頃である。