映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」

ハリウッドの歴史に大きな汚点を残した赤狩りレッドパージ)。
赤狩りが、どのように仕組まれ、映画人がどのような苦難を強いられ、いかに戦ったかを正面から描いた映画はロバート・デ・ニーロ主演の「真実の瞬間」が名を残す。

1947年、アメリカ国会下院非米活動委員会の第1回の聴聞会が始まり、<ハリウッドテン>と呼ばれた10人の映画人は、黙秘権を行使して戦うが、議会侮辱罪で投獄された。
その<ハリウッドテン>のなかで最も有名だった脚本家ダルトン・トランボの波乱の人生を描いたのが、本作品である。
「ミート・ザ・ペアレンツ」のジェイ・ローチ監督。

熱演ブライアン・クランストンが演じるトランボは、週給3千ドルを稼ぐ人気脚本家だったが、地位も名声も捨てて自らの良心と信念を守り通す。
ローマの休日」や「黒い牡牛」など30本以上の脚本を偽名・変名で書き続け、60年になって「スパルタカス」「栄光への脱出」で実名をかちとる。
こうした経緯が克明に描かれ、当時の作品をリアルタイム観ている私には興味は尽きず、ぐいぐい引き込まれた。
B級映画プロデユーサーらの戦う映画人たちにも感服させられる。

ローマの休日」感動のラストシーンが蘇る。
記者会見で、国家間の友好関係について質問され、
「守られると信じます。個人の関係が守られると同様に」と王女が答える。
それに対し「王女様の信頼は裏切られないでしょう」と記者が答える。
”友情と信頼”を最後のセリフに込めたトランボの気概が、この映画を観てじわりと迫ってきた。
イリアム・ワイラー監督は、トランボとの友情を考えて変名での脚本を生前には明かさず死後になって明らかにされた。

死後贈られたアカデミー脚本賞オスカー像のほほえましいエピソードまでも描かれていて、心に残る一本となった。