映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「海街diary」

鎌倉で暮らす三姉妹、長女・幸(綾瀬はるか)、次女・佳乃(長澤まさみ)、三女・千佳(夏帆)は、家族を捨てた父の死亡を契機に、異母妹すず(広瀬すず)と一緒に暮らすことになる。
鎌倉の美しい四季の風景のなか、四人の成長物語。

家族がテーマだけに、”食卓”がドラマを進行させていく。
しらすサンド、カレー、フライ、梅酒そしてお酒。
日本映画伝統のホームドラマ=食文化を巧みに描いている。

ドラマは淡々と進むが、四人四様に変化していくさまに吸い寄せられ共感してしまう。

とにかくこの四人のキャスティングが素晴らしい。
幸が、姉から母へと変わるとき・・。
佳乃が、女の匂いを発散するとき・・。
千佳が、ほとんど父を知らないと言うとき・・。
すずが、抑えていた感情を吐露するとき・・。
是枝裕和監督の眼は的確でやさしい。
静謐で風格ある映画。こんな映画は大好き。

鎌倉を舞台に父と娘、おのずと小津映画を彷彿とさせる。
もしも小津安二郎監督であれば、キャスティングに誰を選ぶのか想像するのも一興。
父は笠智衆、長女は原節子。このふたりは”お決まり”。
男運の悪い次女は、岸恵子。影が薄いマイペースの三女は、有馬稲子。しっかり者の異母妹は、新人・岩下志麻。といったところか。
おっと、父親役の笠智衆は画面に登場しませんね。

そういえば、重要な父親が登場しないからこそ、この映画は四人のそれぞれ違った”父親像”が、会話から膨らんでくるのである。