映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

題名の意味とは? 「菅原伝授手習鑑」

外国映画の邦題にはカタカナが多く、意味不明だったりして映画を観たいという意欲を削いでいる作品があるのではないか。
公開中の映画「ザ・タウン」や「レッド」も、内容を知らない人には、”どんな映画?””ファミリーもの?”と言われてしまう。

その点、歌舞伎や文楽の題名(外題という)は、奥が深い。
昨日観てきた(文楽は、”観た”といわず”聴く”というそうな)、「菅原伝授手習鑑」の外題あれこれ。

文楽の外題は、五文字か七文字。
文楽三大名作といわれている「義経千本桜」は五文字、
仮名手本忠臣蔵」と「菅原伝授手習鑑」は七文字だ。
一方の歌舞伎には、「暫(しばらく)」、「毛抜」、「勧進帳」というように一文字、二文字、三文字の外題もある。

「菅原伝授手習鑑」の「菅原」は、天神様の「菅原道真」。

道真は書の三聖(弘法大師菅原道真小野道風)の一人で、一段目(大序という)には、その筆法を「伝授」する場面が出てくる。
書・学問の神様として、「手習鑑」であり、四段目では、筆法伝授を受けた弟子の武部源蔵が、京都郊外に手習いを教える寺子屋を開いていて、そこで悲劇がおこる。

主役である三つ子の名前は、梅王丸、桜丸、松王丸。
道真の詠んだといわれる
「梅は飛び桜は散るる世の中に何とて松のつれなかるらん」
に即しており、
 梅王丸=「梅は飛び」→父親に追いだされる
 桜丸=「桜は散るる」→切腹して散る
 松王丸=「松のつれなかるらん」→我が子を犠牲にした父親の悲しみ
と和歌にあやかった名前と運命となっている。

作者は竹田出雲・並木千柳・三好松洛の三人での共作で、文楽三大名作のすべてを作り、文楽の黄金期を築いたのである。
黒澤明監督の映画「七人の侍」は、黒澤明橋本忍小国英雄の三人で物語を作ったことは有名であるが、黒澤監督黄金時代の作品がすべて共同脚本となっていることと共通する。
共同脚本とすることによって、そこに優れた「複眼の映像」が生まれると橋本忍は言う。