映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」

ドキュメンタリー映画パリ・オペラ座のすべて」、「クレイジー・ホース・パリ 夜の宝石たち」などの巨匠フレデリック・ワイズマン監督最新作は、
ロンドンにあるナショナル・ギャラリーが舞台。

映画館では、同じ美術館ドキュメンタリー映画である「ヴァチカン美術館 天国への入口」の予告編上映があり、数々の宗教画・壁画に壮大華麗な宗教音楽が最後まで鳴り響いていた。
その直後に本編「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」が始まったのだが、数々の宗教画が映し出されても無音だ、やがて聴こえてくるのは美術館内を清掃する掃除機の音・・。

そう、ワイズマン監督作には、音楽やナレーションが無い。
だからこそ映画の観客は美術館その場にいるような臨場感を堪能できるということとなる。
世界有数の美術館を丸ごと体感できる。これが心地よい。

ナショナル・ギャラリーの魅力のひとつがギャラリートーク
実際のトーク場面に同席しているかのように解説を楽しめる。
解説者も個々の絵画の通説を述べるのというのではなく、鑑賞者が絵画と対話できるように仕向けるという解説となっていて、
そこに長い歴史と伝統を感じてしまう。
聴いている観客の顔、表情も丁寧にカメラに収まっていて、映画の観客とも共有できるという幸せ感。
これらの解説を聴くだけでも価値がある。

学芸員たちの情熱、高度な修復技術、デッサンなどのワークショップなど
なかなか見ることができない世界もしっかり見せてくれる。

3時間1分の上映時間が”短い”と感じたほど濃密な時間だった。