「ヒューゴの不思議な発明 3D」
映画創世期のサイレント映画で思い出すのは、学生時代に京橋にあった国立近代美術館(現在のフィルムセンター)で観た多くの作品。
サイレント映画は映像が勝負であり、「國民の創生」(D・W・グリフィス監督)や「ナポレオン」(アベル・ガンス監督)など、その高いクオリティーに圧倒された。
実験精神も旺盛で、「裁かるゝジャンヌ」(カール・ドライヤー監督)や「アンダルシアの犬」(ルイス・ブニュエル監督)の芸術的表現にも驚嘆した。
「戦艦ポチョムキン」(セルゲイ・エイゼンシュテイン監督)には、モンタージュ理論の”主張力”をみせつけられた。
これらの作品はいまや、簡単にYouTubeでも観ることができるようになったが、1960年代の学生時代に初めて観た当時は衝撃を受けた。
そして、ジョルジュ・メリエス監督の10分ほどの映画「月世界旅行」であるが、映画史的に貴重な作品ということで観ていた。私には喜劇映画のジャンルで、まるで学芸会のような印象だったと記憶していた。
それが、この映画「ヒューゴの不思議な発明」で解き明かされたのだ。
映画の後半では、主人公の孤独な少年ヒューゴと老人メリエス監督の回想となり、映画創世期の時代へと展開するのだが、ここからが面白い。
メリエスの映画「月世界旅行」制作風景が再現され、奇術師だった監督の消えるトリックの誕生秘話が明らかに。
またメリエスが作った撮影スタジオと舞台装置が再現されると、そこはまさに”学芸会”の舞台のようだった。
だが、数百本作ったというメリエスの映画が、その後映画の発展に繋がり”映画の父”と呼ばれる。
その”SFXの創始者”メリエスに捧げる映画だけに、最新映画技術の「3D」でなければならない必然性があるのだ。
パリの遠景からはじまり駅舎や時計台へと縦横無尽に動くカメラワークの冒頭場面から3D効果に魅了される。
これほど3Dを意識した映像表現には感服した。
その驚きが少ない分、2D版で観ると損しますよ。
傑作サイレント映画の数々をも思い起こさせてくれたマーティン・スコセッシ監督渾身の映画賛歌。