映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「FOUJITA」

藤田嗣治の絵が好きで、所蔵作品の多い東京国立近代美術館ブリヂストン美術館 、ポーラ美術館、ひろしま美術館には何度も行っている。
毎週見ているテレビ番組「美の巨人たち」にも何度か登場しているから、彼の生涯にも詳しい。
若くして単身パリに渡り、「乳白色の肌」で裸婦を描き、エコール・ド・パリの寵児となったこと。
大戦がはじまると帰国し、戦時下で戦争協力画を描くことになったこと。
戦後日本を出国し、フランス国籍を取得し洗礼を受け、教会のフレスコ画に情熱を賭け、その教会が永眠場所であること。
波乱の生涯である。

しかし、この映画はそうした苦悩と波乱の生涯を描いていない。
前半は、エコール・ド・パリを謳歌する狂乱の生活ぶりが、
後半は、戦時下で5度目の妻と静かに送る日本での生活ぶりが、
描かれていて、両者のギャップに驚く。
そこには、ただただ本人を見つめるカメラがあるだけ。
前後の説明もなく、ドラマらしい展開もない。
最後のシーン、藤田が眠る教会すら説明なし。
これが「泥の河」「死の棘」の小栗康平監督の流儀。
カメラの視線はまっすぐで、とてつもなく美しい。
そのカメラの追う経過を楽しむ映画といえようか。
しみじみと味わうべし。

藤田役をオダギリジョーが、妻の君代を中谷美紀が演じる。
日本とフランスの合作映画として意義深い作品。