映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「クラウド アトラス」

歌舞伎の世界は、役者中心。役者の魅力をひきだすために何役も演じる舞台がある。
最近では、海老蔵が「慙紅葉汗顔見勢」で、なんとひとり十役をこなし、女形七之助は「於染久松色読販」で、七役早替りを見せている。

この映画で、トム・ハンクスはひとり6役を演じている。
時代も場所も異なる6つの物語のなかで、時代を超えた転生・継承を表現する手段だ。
豪華配役陣のハル・ベリーペ・ドゥナヒュー・グラントらも、6役をこなしているようだが、エンドロールを観るまで気づかなかった役も多く、これもみどころ。
ただし、トム・ハンクスだけは、その独特の声を聞けば6役解るので安心。

キャッチコピーが、
”「マトリックス」3部作の監督と「ラン・ローラ・ラン」の監督が贈る感動巨編”
とあるように、6つの物語がマトリックスのように展開しても、わかりやすく、3時間の長尺だが、「ラン・ローラ・ラン」のようにスピードあふれる展開で、飽きさせない。
編集の妙と、場面転換ですぐ時代がわかる美術スタッフの支えが大きい。

壮大なスケールで自由や人間の善悪、運命を描いているのだが、心揺さぶるほどのストーリーとなっていないのが、なんとも惜しい。