映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

国立劇場・文楽公演「奥州安達原」

文楽の東京公演(国立劇場小劇場)は、年4回しか公演されないこともあり毎回楽しみにして鑑賞している。
私のブログには新作映画優先なので、文楽鑑賞記はあまり書いてはいないが、久しぶりにアップしたくなった。

今月の公演は、大夫・三味線・人形遣いとも人間国宝級の出演者がいないのだが、感動の舞台だった。

演目は、”泣かせの定番”

「奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)」
   外が浜の段
   善知鳥文治住家の段
   環の宮明御殿の段

安倍一族の再興を描く時代物。
最後の2時間に及ぶ長い「環の宮明御殿の段」だけでも壮大な物語。

みどころは、盲目の袖萩と娘お君の登場場面。
雪が降る寒空の下で袖萩が、勘当された両親に切々と自分の身の上を語る。
寒さが観客にも伝わり、哀れな運命に何度も泣かされる。
袖萩を遣う勘十郎が素晴らしい。これまで立役が多かったのだが、女形でも悲哀を見事に表現していた。
三味線手の使いぶりには、観客からため息がでるほど。

人形が命を宿す、まさに人形浄瑠璃ならではの世界を満喫した。