映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

歌舞伎「元禄忠臣蔵」

仮名手本忠臣蔵」は、”お軽と勘平”という史実にない人物を登場させることに劇作者の心と手腕があり、ゆえに庶民に最も愛される名舞台となった。
一方、史実に近いといわれる真山青果作の「元禄忠臣蔵」にはお軽と勘平は登場せず、もっぱら大石内蔵助を中心に”人間”を描く。
大星とか塩治判官という”仮りの名”も使われていない。だから「仮名手本」ではなく、「実録」忠臣蔵といえそうだ。
歌舞伎特有の音楽はなく、役者のセリフで見せる舞台。

国立劇場十二月歌舞伎公演を、じっくりと鑑賞してきた。

今回の演目は、「元禄忠臣蔵」10編のうち人気の高い3編。
  江戸城の刃傷
  御浜御殿綱豊卿
  大石最後の一日

「御浜御殿綱豊卿」
お家再興と決まっては吉良を討てないと、助右衛門が槍を突き出す。
槍先を避けた人物は吉良ではなく綱豊卿(吉右衛門)だった。
本当の仇討とは吉良ひとりの命を奪うのではなく「理を踏み、義をつくす誠」とさとす。”人間”綱豊卿の苦悩と心配りが、セリフに込められ感動を呼ぶ。

「大石最後の一日」
切腹の場におもむく浪士たちの姿を見届け、「これで初一念が届いた」と、大石最後の時を迎える。
”人間”大石(吉右衛門)の、すべてを終えた満足感、凛とした表情に、
大向こうから、”大播磨!”の声が。