映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「八日目の蝉」

映画の原作である小説を読んで、これは角田光代の代表作になると確信した。
NHKのテレビドラマ化では、母性に忠実に生きる檀れいの演技が光っていた。
そして、今回の映画化でも、ふたたび感動した。

小説ともテレビドラマとも違っている点は、
大学生となった恵理菜(井上真央)の視点で終わるラストシーンに象徴されよう。
未来に向けたメッセージが感動を呼ぶ。
画面の暗転が、さわやかで、余韻を残すラストシーンだ。
これが、誘拐犯である希和子(永作博美)の視点で終わる原作やテレビとの違いだ。

映画化が成功したのは、「サマーウォーズ」の奥寺佐渡子の脚本だろう。
あえて恵理菜と希和子を等分に描き、希和子の心情ばかりか恵理菜の心情をあぶり出したところにある。
全篇に一分の隙もないきめ細やかな人物描写が、この異常な物語を現実味あふれる
ものにしていた。
赤ん坊を連れ去るときの突然の変身場面、美しい祭りに感激する場面(この表情が写真に撮られるのだが)、逮捕時に叫ぶ場面など、共感せざるを得ない。
永作博美ばかりか、井上真央も見違えるほどの熱演だし、小池栄子も過去を背負う女性を怪しく演じてドラマを際立てていた。

成島出監督の完全無欠なカットや丁寧な画面造りも感心した。