暴力シーンが続く映画だが、観終わって”愛”を実体感するという映画ならではの表現に、衝撃を受けた。 監督第1作で、製作・脚本・編集そして主演のヤン・イクチュンという、すごい新人が韓国に現れたものだ。 監督第1作で、暴力が描かれた映画で、すぐさま北野武監督の「その男、凶暴につき」を思い出したが、この映画の暴力は、その北野監督を上回る悲惨な暴力だ。 父の母に対する家庭内暴力を見て育ち、今度は自分が老いた父に暴力をふるう。 暴力をふるうことで自分の存在がある。 背景となる坂道、屋台、商店街のシャープな画面が息づき、動きある暴力シーンが重なり、まさに息もできない緊張感が続く。 これも映画だけで味わうことのできる魅力。 ドラマは後半になると、主人公サンフンと女子高生ヨニのふたりの心に変化が生じてくる。 そして、屋台を襲う弟を見つめるヨニの姿は、断ち切れない暴力の連鎖を見事に表現した衝撃のラストシーンだった。
考える前に行動を起こす暴力。
これは、哀しい暴力だ。
夜の漢江で慟哭する二人のシーンには感動した。
イタリア映画の名作「道」のザンパーノの嗚咽場面と重なった。