映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「悲しみのミルク」

題名の「悲しみのミルク」とは、母乳から母の苦しみを子に受け継ぐという貧しい村の言い伝え。
その苦しみから再生する女性の物語だ。

南米ペルーの映画。
あまり知らない国の映画を観る魅力は、その国の歴史や文化にふれることができることだ。

ペルーの歴史や文化について、まったく予備知識なしで観たが、映画の最初に描かれる母が歌う内容は、重く、傷は深い。
先住民族への迫害や内戦といった歴史の背景をを知らされる。

結婚式やプールでの村人たちの明るい振る舞い、南米の陽気な音楽を背に、主人公は母の苦しみを受け継ぎ生きるには、あまりに哀しい。

その姿をじっとみつめる密度の濃いカメラ。
時間と共に不思議な感覚で不条理な世界に入り込んでいく。最後まで主人公に共感することができないものの、静謐な気持ちになって映画は終わる。

第59回ベルリン映画祭金熊賞を受賞したのは、映画でしか表現しえない感覚の作品だからであろう。