映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

5月文楽公演と囲碁の話

国立劇場小劇場で、5月文楽公演・第一部を観てきた。
文楽の名作3本建て。
祇園祭礼信仰記 (ぎおんさいれいしんこうき)」
「碁太平記白石噺 (ごたいへいきしらいしばなし)」
「連獅子 (れんじし)」

私の御贔屓・人形遣い桐竹勘十郎が初役・雪姫に挑む「祇園祭礼信仰記」。
桜の木に縛られた雪姫の姿は、歌舞伎での人間では表現できないような”これぞ人形美!”。
今回は1列目の席だったので、人形振りをたっぷり楽しむことができた。

金閣寺の段は、通称”碁立て”とも呼ばれるように、囲碁用語である「一間飛び」「中手」などが床本に使われ、碁盤の上での腹の探り合いや、「手をぬらさずに井戸の中の碁笥を取り出すにはどうするか」といった場面があり、いかにも碁好きの秀吉の世界で、おもしろい。

名題は、「祇園祭信長記」だったが、幕府の指示で「〜信仰記」と改題したようだ。
祇園祭礼」は、信長が祇園牛頭天王の祭礼を再興する話(二段目)が由来。
外題の由来を調べるのも楽しい。

ちなみに、「碁太平記白石噺」の外題には、「碁」とあっても囲碁の場面はない。
奥州白石村で起こった百姓の娘2人による仇討ち話(「白石噺」)と、由井正雪一味による幕府転覆陰謀事件を「太平記」の時代に置き換えたものだから、外題は「太平記白石噺」となるが、これでは六文字なので、白石(黒石)→碁と、「碁」の一文字を加えて
文楽常套の七文字外題にしたのではないだろうか。