映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「空気人形」


この映画を観ていて、学生時代に観たアントニオーニ監督作品を思い出した。

そう、あの感覚なのだ。
「さすらい」「情事」「夜」といった作品で、アントニオーニが
現代人の不安や孤独、断絶を映像で示した、あの感覚なのだ。

 

是枝裕和監督作品「空気人形」は、現代人の不安や孤独、断絶を描ききる。
心を持ってしまった空気人形が恋をするというファンタジー映画なのだが、中身はシリアスで深い。

 

主役の人形役は、韓国の人気女優ペ・ドゥナ

日本映画に進出した「リンダ リンダ リンダ」を観ているが、これまでの韓国女優と違う等身大の自分をだしていて好感がもてた。
今回の「空気人形」での演技もお見事。
人形から人心を持ってしまった人間へと変わる場面の美しいこと。

雨のしずくに手を出して雨の感触を体験する場面、街へと不器用に歩き出す場面で、しっかり画面に定着して、この不可思議な寓話世界を魅力あるものにすることに成功。

 

人間だれでも空気人形。
空気をいれてもらって、生を得る。
死んでしまえば、ただのゴミ。


人形が、綿毛に託して風に乗って感謝してまわるところ、”美しい”と言わせるゴミ、

この映画を観た人がさまざまに受け取ることのできるところに監督の工夫があるのだろう。