映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「恋人たち」

キネマ旬報ベスト・テン第1位
  毎日映画コンクール日本映画大賞
この2大映画賞で共に最高の評価を受けた作品だけに、映画館は最前列まで満席。
寡作のひと橋口亮輔監督の「ぐるりのこと。」以来7年ぶりとなる新作。

妻を失った男(篠原篤)、パートで働く平凡な主婦、ゲイのエリート弁護士、この3人が懸命に生きる姿を描く人間群像劇。
演じるのは、いまだ無名の俳優たち。
それぞれが脇を固める達者な役者たちにからみながら絶妙の存在感をみせる。
2時間20分無名の俳優たちで、グイグイ引っ張っていくのだから、驚く。

3人の孤独や疎外、鬱屈した思いを描きながら、犯罪被害者の無力、役所の対応ぶり、弁護士の対応ぶり、麻薬や詐欺などのエピソードを重ねながら、理不尽で閉塞的な現代日本の縮図も見据える。
橋口監督(脚本も)の人間観察力は尋常ではない。
登場人物たちの痛みや真情に深く触れ、圧倒された。

”それでも人は、生きていく”
この宣伝用キャッチコピーが、ピタリ観客に届く。

苦言をひとつ。、
映画館に行く前に予告編を観ている。
この映画の内容がよく分かるようにできているのだが、予告編の最後のシーンを観たとき、これは本編のラストシーンにピッタリだなと思った。
さらに、「殺しちゃ、だめだよ」と諭す、映画の核ともいえる場面もある。
そこまで予告編で見せることはないと思うのだが。
まだこの映画を観ていないひとは、事前に予告編を観ないように!