映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

井上荒野著「静子の日常」

"何かが過剰で、何かが足りないこの世の中
今日も出くわす“ばかげた”事象を宇陀川静子・七十五歳は見過ごさない
―チャーミングで痛快
直木賞作家の最新長篇小説―"

最近読んだ本では、この井上荒野著「静子の日常」が、一番のお勧め。

息子家族と4人で暮らす静子さんは75歳。
意地悪ばあさん”でもなく、”姐御(あねご)”とも少し違う。
本の帯に書かれたように”チャーミングで痛快!”な静子さん。
彼女はまた、凜として素敵な日本女性なのだ。
息子夫婦と娘は、静子さんのいろいろな計略に変化をきたす。
そんな物語なのだが、読み終わってなにか新鮮なものを感じた。

静子さんのあこがれのひと茗荷谷さんから自分の死が近づいた時、
静子さんに送ってきた「くるな」と大きく書かれた葉書の衝撃、

それに続く嗚咽しながらの水泳、
その後の大道芸人と「いとしのエリー」についての会話など、
さらりと書かれた文章だが奥深く新鮮な描写に、おもわず”うまいなー”と感心する。
小説ならではの味わい。

あと10年すれば私も75歳。
この静子さんのように私も老いたい。
だが私は男なので、茗荷谷さんのように老いたいとも思うのだが、いつもまわりに女性がいそうにもないので、それは無理か。