討ち入り場面がない、
最も史実に近い、
忠臣蔵の決定版
ともいわれる真山青果作
「元禄忠臣蔵」。
団十郎はお家芸荒事タッチを捨てて”人間対人間”の抑えた感情で、南部坂雪の別れ」を演じ、仁左衛門は「仙石屋敷」で仇討ちの”心”を切々と凛と語る。
幸四郎は代表演目「大石最後の一日」を、幸四郎らしく朗々と大きく演じ、観客の涙をさそう。
この舞台は、歌舞伎音楽が一切なく新劇ともいえるが、それを歌舞伎役者が演じることで、新歌舞伎の代表作となっている。役者の力量が舞台で試される。映画版の「元禄忠臣蔵(前後編)」も有名で、溝口健二監督のワンシーン・ワンカット主義を貫いての演出が舞台さながらの緊張感を持続させ、河原崎長十郎が”人間大石”を見事に演じていた。
戦前の日本映画で大好きな作品のひとつ。