映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

文楽「女殺油地獄」

最も観たかった文楽の演目
女殺油地獄」(おんなころしあぶらのじごく)
を、やっと観ることができた。感激!
国立劇場(小劇場)にて。

近松門左衛門最晩年の傑作だが、心中モノではなく、
殺人事件。動機も単純な青年の犯罪事件だが、近松だけあって、奥が深い。観客が想像思考する幅が広い。

河内屋与兵衛を遣う人形遣い桐竹勘十郎はちょうど1年前の二月公演で「狐忠信」で宙乗りを見事に演じたが、今回もまた流れ出す油の中で、与兵衛がお吉を殺す場面で魅せる。
舞台狭しと油の上を滑りながらの人形遣い、お見事でした。

この文楽の傑作は、何回か映画化されている。
中学生のときに観た堀川弘通監督の「女殺し油地獄」が忘れられない。
与兵衛を若き中村扇雀が演じ、お吉は新珠三千代で、殺しの場面が壮絶だった。
何故こんないい人を殺さねばならないか、その不条理さに当時ショックを受けた記憶があるが、今回文楽を観ていて、今も昔も変わらぬ放蕩息子の姿に、近松の人間を見つめる厳しさをみつけることができる。