映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「グランド・マスター」

香港のウォン・カーウァイ王家衛)監督の「欲望の翼」と「恋する惑星」を初めて観たときは衝撃的だった。
クリストファー・ドイルの撮影による幻想的な手持ちカメラを用いた躍動感ある映像と即興的演出が斬新で、アジアにヌーベルバーグ監督が誕生したと思った。

そして、「楽園の瑕(きず)」で、極まった。
砂漠に舞う風、突き抜ける青い空、壮麗なアクション映像の美しさに酔いしれた。

その後「ブエノスアイレス」と「花様年華」によって世界的名声を得た監督の最新作が、「グランド・マスター」だ。

詠春拳の達人として知られる武術家のイップ・マン(葉問)を描いた映画。
もちろん、単なるカンフー映画ではない。武術家その人間味をも滲みでてくる美しいカンフーなのだ。

今作もまた、見事な映像が最大のみどころ。
雨滴、雪、闇、列車を背景に、狭い室内空間の中で、スローモーションを多様して、カンフーの魅力と迫力をタップリと観せてくれる。

イップ・マン(トニー・レオン)とルオメイ(チャン・ツィイー)との闘いで、二人の顔の接近場面の豊かな情感はセリフ以上の説得力があった。
トニー・レオンチャン・ツィイーが素晴らしい。
その孤独で静かなたたずまい、人間の深みが的確に写しだされていた。
そのカンフーぶりも、お見事!

私はこんな映像至上の映画を愛してやまない。
この映画は、どんな解説よりも映画館で自分の眼で確かめるのが一番。