映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「パーマネント野ばら」

吉田大八監督の第1作「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」は、両親の訃報で、実家に帰省したことから起こる
家族との愛憎ブラック・コメディー。
舞台は原作者(本谷有希子)の故郷と同じ石川県能登だった。

 

この映画も同様に、
主人公なおこ(菅野美穂)が離婚して実家に帰ることから、はじまる。
舞台は原作者(西原理恵子)の故郷である高知県の海辺の田舎町。
監督お得意のパターンなのだ。
東京生まれの私には地方を描く映画が魅力的に映る。

 

実家は、「パーマネント野ばら」という美容室。
そこにたむろする中年女性たちは、何年たっても恋をして、会話は下ネタばかり。
頭の中はSEXのことでいっぱいで会話はエロ話ばかりという男たちというパターンを、女性が乗っ取った。


ここでは、女が働き、男は好き放題のダメ男ばかりが登場。
唯一なおこの恋人である高校教師(江口洋介)だけがダメ男ではなくアイドル的存在として登場する。

アイドルだから、生活感がない人物として描かれるところが、ミソ。

 

なおこの友人二人、みっちゃん(小池栄子)のバイタリティーに圧倒され、ともちゃん(池脇千鶴)の不幸な男歴の、すさまじさ。

 

こんなドタバタ劇の最後に、そっと心憎い感動を用意する。
恋人とのデート、静かに打ち寄せる波、なおこが海岸で右手に握る砂、過去の記憶が一気にフラッシュバックされる映像展開が圧巻。孤独でいとおしい。
8年ぶりの主演だという菅野美穂のあどけないアップの顔が印象的で、文句なしの素晴らしさ。

 

女性映画なのだが、男性が観ても、心に沁みる佳作。