映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

三島由紀夫の「憂國」

JR大森駅東口にある映画館「キネカ大森」は、主に東宝系のロードショーを興行しながらも、韓国・香港などのアジア映画の特集企画を行うことで評価されている劇場だ。



そのキネカ大森で、「三島由紀夫映画祭2006」が開催されている(5月12日まで)。

昨年ネガフィルムが発見され話題の「憂國」(67年)を観にいった。

この映画は、同名の短編小説を原作に、三島が出資して製作・監督・脚色・主演した28分の映画。2.26事件に参加できなかった陸軍中尉(三島)が切腹し、妻も後を追うという話である。

能舞台様式で演じられ、セリフはない。全編ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」が流れる。主題が割腹場面だけに、三島の死に様を知る観客は先入観なくしては観れない。ラストシーンは枯山水庭園にあるような白砂にふたりが折り重なって---これが三島の美意識なのだろう。



映画祭は、毎日2回上映の「憂國」のほか、三島自身が自分の原作で最も出来栄えが良いという「炎上」(市川崑監督。58年)、市川雷蔵主演の「剣」、たびたび映画化された「潮騒」や「黒蜥蜴」、三島唯一の主演作「からっ風野郎」(増村保造監督。60年)など15作品が上映されている。

映画のほか、歌舞伎や能などの伝統芸能にも造詣は深く、マルチな活躍をした三島を偲ぶ絶好の機会ではある。



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