映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「切腹」と「一命」

<私の映画遍歴10 大学生時代>

1964年(昭和39年)、東京オリンピックの年。
はれて大学に入学したものの、とんでもないことが大学で起きた。
学費値上げ反対で全学ストに突入したのだ。
大学とは駅の反対側にある麻雀荘に入りびたりで、なんか麻雀ばかりしていた。
授業料を払っていても授業がない。
そして、試験の代わりにレポート提出が多かった。

たしか経済史のレポート提出だったと思うが、書いたのが映画のこと。
レポートのテーマは、「歴史と資料」について。

レポートで取り上げた映画は、橋本忍脚本・小林正樹監督の「切腹」。
ポイントは、ラストにある。
非道を訴えるために井伊家に乗り込んだ半四郎(仲代達矢)は、逆らう家臣を数名惨殺するも、最後には卑怯にも鉄砲で撃たれて死んでしまう。
だが、歴史として残る記録「井伊家覚書」には、
「家臣はすべて病死、浪人は申し出のとおり切腹。」と書かれたというのだ。
権力者にとって都合のよい記録なのだ。これが歴史資料として残ること、歴史資料の扱い方などに言及したレポートを書いた。
これで無事単位を取得。趣味の映画が役にたった。

映画「切腹」は、
「井伊家覚書」で始まり、お得意の回想場面を軸にして、最後に「井伊家覚書」で締める橋本忍の脚本、
モノクロの迫力とワイド画面を余すことなく使った宮島義男の撮影、
琵琶が重層に奏でられる武満徹の音楽など、日本映画の最高技術スタッフ陣が腕を競った。
家族愛とともに権力に抵抗する半四郎の姿に感動。

この滝口康彦の原作「異聞浪人記」が、三池崇史監督「一命」という題名で再映画化された。
主演の市川海老蔵、起死回生の一作となるのか、期待したい。

                            <続く>