映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「野火」

原作は、フィリピンでの戦争体験を基にした大岡昇平の小説。

最初の映画化である市川崑監督作をリアルタイムで観たときは、中学3年生だった。
さすがに、人肉を食うというショッキングな内容には震撼したが、”戦争の狂気”を肌で感じて深く感銘した。
主演の船越英二ミッキー・カーチスが、撮影のためガリガリに痩せて登場したこと、狂気の世界でも渇いた美しいモノクロ映像も、今でも強く記憶に残っている。

戦後70年。
先の市川崑監督作が作られてから56年も経過した。
今この時代に製作した意義は大きい。

今回の塚本晋也監督作はカラーで、強烈さは、倍加した。
美しい青い空が狂気を対比させ、ラストシーンの真っ赤な炎が野火のイメージを印象づけた。
なにより”戦争の狂気”を強烈に描いて、監督渾身の作品となった。

これまでもインディーズ作品で奮闘してきた塚本晋也監督。
今回も脚本・製作などに加えて主演も兼ねて
「いまの時代に問うべき作品」という強い思いがひしひしと伝わってくる。