映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

国立劇場9月文楽公演「一谷嫩軍記」

国立劇場開場50周年を記念する文楽公演の第一弾は、通し狂言「一谷嫩軍記」。
その前半の第一部を聴いてきた(文楽は”見る”といわず、”聴く”という)。

源平合戦の時代を生き抜いた武将たちの熱い想いが描かれた親と子の物語。
文楽・歌舞伎では最も有名な最後の「熊谷陣屋の段」だけが繰り返し上演されてきたが、今回、国立劇場では41年ぶりとなる”通し狂言”で、これだけで嬉しくなる。

源義経熊谷直実に制札を渡す「堀川御所の段」に始まり、敦盛が白河法皇の子であることが明らかになる「敦盛出陣の段」と物語は進む。
ミステリー仕立ての本作、敦盛と直実の子のすり替わりの伏線が「陣門の段」から「須磨浦の段」、「組討の段」へと続き、最後の悲劇へと向かう展開は、浄瑠璃語りを一瞬たりとも聴き逃せないし、人形遣いの動きも見逃せないという緊迫の舞台を堪能してきた。

熊谷が敦盛の首を討つ「組討の段」では遠景と近景場面の展開が鮮やかだが、ロシアの映画監督エイゼンシュタインは、この舞台を見てモンタージュの手法を思いついたという名場面にも感心する。

改めて、文楽世界遺産であり日本の宝であることを実感した。

国立劇場開場50周年を記念する歌舞伎公演の第一弾は、「仮名手本忠臣蔵」全段を10月より3ヵ月にわたり完全通し上演。
こちらも楽しみ。