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<ブログ18年目です>

歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」 今月の主役は加古川本蔵

国立劇場・歌舞伎公演「仮名手本忠臣蔵・第3部」を観てきた。
3か月連続での”完全通し”狂言で、12月は、全十一段のうち、八段目(道行)から十一段目(討入り)までの上演。

今月「第3部」のキーパーソンは、九段目(山科閑居)の「加古川本蔵」である。

桃井家家老の加古川本蔵の娘小波と、大星力也とは許嫁の仲だったが、判官が殿中で刃傷に及んだとき本蔵が抱き止めたことで祝言話は停止していた。
星一家が山科に居ることがわかり、一途に思いつめる小波を連れて継母戸無瀬が力也に嫁入りさせに来る。
戸無瀬と小浪が死を覚悟する親子の情愛。
娘の幸せを奪ってしまったと、武士として父親として苦悩する本蔵。
その心中を察した由良之助が見せる深い思慮。
見せ場は多い。

この九段目、文楽では全段中で一番上位の太夫が語る段で、それだけ重要な幕なのだ。
十三代目の仁左衛門は「忠臣蔵のなかで歌舞伎の美しさが一番濃厚なのは九段目」と言う。
重要な幕だから今月の歌舞伎舞台で加古川本蔵役を松本幸四郎が演じる。
ちなみに大星由良之助役を演じるのは中村梅玉である。

本蔵はわざと力也の槍に突かれ、娘のために命を捨てる。
力也は槍を突く決心に一瞬ためらうのだが、本蔵は自らその槍を腹に突く。
それゆえ忠臣蔵三つの「切腹場」といわれる。
「三つの切腹場」他の二つは、言うまでもなく判官切腹と勘平切腹である。

こうしてみると、国立劇場完全通し公演「第1部」四段目が判官切腹、「第2部」六段目が勘平切腹、「第3部」九段目が本蔵切腹というように、「三つの切腹場」を物語の大きな柱にしている壮大な物語ということがわかる。

大序(兜改め)から十一段目(討入り)まで、3か月連続で堪能した舞台だった。