映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「ライク・サムワン・イン・ラブ」

アッバス・キアロスタミ監督のイラン映画友だちのうちはどこ?」、「そして人生はつづく」、「オリーブの林をぬけて」(“ジグザグ道三部作”と言うそうだ)を観て監督の作風に感心した。
素人俳優を起用して、生活感ある、生き生きした人間描写が見事なのだ。

初めて母国イランを離れイタリアで撮った「トスカーナの贋作」は、一転ジュリエット・ビノシュら有名俳優を起用して、夫婦と間違えられたふたりが、そのまま夫婦の会話で旅をするという話。
役者に事前に台本を渡さずに即興演出による不可解な人間描写がなんとも面白い。
どこまで本物で、どこまでが贋作なのか、というテーマは、そのまま「映画」というのものの本質にも係わっている。

日本で撮ったこの日本映画「ライク・サムワン・イン・ラブ」も、「トスカーナの贋作」と同じテイスト。
デートクラブの女子大生(高梨臨)の父親と間違えられた元大学教授(奥野匡)は、父親のまま青年(加瀬亮)と会話する。
会話劇は、緊張をはらんだまま展開していく。
この展開が、目が離せない面白さ。
演じる3人の役者があまりにも自然体なので、どこまで本物で、そこまで演技なのか、と思わせてしまうほど。

監督の作風は、監督自身が作った予告編を観れば、一目瞭然。

今年これまで観た映画では私のベスト・ワン作品。