ナラタージュ=映画などで、主人公が回想の形で過去の出来事を物語ること。
03年高校在学中に芥川賞候補になって話題の人になり、
宝島社の「この恋愛小説がすごい! 2006年版」においては堂々の第1位となった島本理生のロンセラー小説「ナラタージュ」(角川書店。05.2.25.刊)を読んだ。
大学生のヒロインが高校時代の恩師との純愛を回想するという他愛もないお話だが、これが正統な堂々とした哀しく美しい物語に仕上がっていて、この年齢でこれだけの本格恋愛小説を描ききっていることに驚く。
心象風景や会話が生きていて、それが積み重なり、じわりとした感動を呼ぶ。
この小説のなかで、うまく使われているDVD映画。
その題名を挙げる。
「エル・スール」「ミツバチのささやき」「真夜中のカウボーイ」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「アンダーグラウンド」「僕の村は戦場だった」「存在の耐えられない軽さ」の7本。
映画通であれば、なるほどこんな映画の匂いがある小説なのかとおわかりになるだろう。
逆に、この小説が気に入って、これらのDVDを未見のひとは、是非レンタルビデオ店で借りることをお勧めする。
どの映画も実験的で一級の作品ばかり。淡々と描いて、じわり感動を呼ぶ作品群だ。
私はこのなかで特に一本といえば、スペイン映画「ミツバチのささやき」(73年。ヴィクトル・エリセ監督)が好きだ。
無垢な少女の瞳が印象的で、美しい静寂が全編を包む映像に酔いしれること、うけあい。
この小説では、同じヴィクトル・エリセ監督の「エル・スール」のDVDを、ふたりの最後の日にいっしょに観るというラストが用意されている。
これがまたいい。