映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「紙の月」

バブル崩壊後の1994年、銀行の契約社員として働く平凡な主婦・梨花宮沢りえ)が、大学生(池松壮亮)と不倫関係に。
その快楽のため、いつしか顧客の金に手をつけていく・・・。

観客は次第に主人公と同化し、どうみても破滅しかない最後に向かって、終始ドキドキしながら宙吊り状態に追い込まれる。
2時間6分、ひとときも緩むことないサスペンス映画の傑作が生まれた。

冷徹に監視する先輩女子行員(小林聡美)、悪魔のささやきをする後輩銀行員(大島優子)等、ヒッチコック監督の「レベッカ」のよう。

初めて二人が急接近する駅のホーム。大学生の立っているところへと降りてくる梨花のスローモーションは素晴らしいシーン。
こちらは「めまい」を思い出す。

最後は「羊たちの沈黙」か。
このシークエンスによって破滅の物語も救われた気持ちとなる。

登場人物たちの言動不一致ぶりが今日的だった「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督は、今回、緊張感あふれた見事な作画と、不安と快楽・弱さと大胆さを自然体でみせた宮沢りえの演出に注目だ。

お金万能の世の中に問題提起している見方もあろうが、純粋にサスペンスをたっぷり堪能できる、本年ベストの日本映画。