映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「この国の空」

”わたしが一番きれいだったとき
  わたしの国は戦争で負けた”

「赫い髪の女」「ヴァイブレータ」「共喰い」など、男と女を描いて名手の脚本家・荒井晴彦の監督第2作。

終戦の年、東京杉並で母(工藤夕貴)、叔母と共に暮らす19歳の里子(二階堂ふみ)は、丙種により徴兵を免除され、妻子を疎開させ一人で生活している隣人の市毛(長谷川博己)の世話をするうちに、不倫関係に・・。

戦争映画といえるが、爆撃や戦闘場面は一切出てこない。
ガラス戸に紙を貼る行為や、空襲のサイレン音、”本土決戦”というような会話、だけで戦時下の庶民の暮らし日常を淡々と描いていく。
少女から女へと変貌していく里子を演じる二階堂ふみは、「私の男」同様に圧巻の演技。この時代の女を堂々と演じてみせる。
時代背景には、絶望や死と隣合わせの不安感があって、それだけ里子の気持ちが心に届く。

終戦を迎えて里子の思い、”私の戦争はこれから始まる”と、立ち上がるひとりの女性像が、まぶしい。