映画ファンのブログを読んでいると、外国映画の「邦題」についての苦言が少なくない。
邦題が、意味不明だったり、陳腐なものだったり、安易に原題をそのままカタカナにしたものだったり、・・と。
私も同感。
そこで、古きを尋ねて、歌舞伎や文楽の題名(外題という)を調べるのも楽しい。
「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」
が上演されている。仙台藩3代藩主・伊達綱宗が、伽羅(インドの香木)で作った
下駄を履いて、遊女遊びの末、身を持ち崩し、隠居。
跡を継いだのは、幼い藩主。そこで起こるお家騒動(伊達騒動の史実)を描いた作品だ。題名に込められた意味は?
お家騒動の元になった遊女遊びを揶揄する高価な「伽羅」の下駄。
「伽羅(きゃら)」は、”名木”。だから、「伽羅」を”めいぼく”と読ませる。
「先代」は「仙台」。
仙台市・市の花は「萩」。宮城県・県の花は「宮城野萩」。
この外題で、史実の”伊達騒動”を連想させ、題名から劇の内容が分かるしかけ。同じ伊達騒動を扱った小説に、山本周五郎の「樅ノ木は残った」がある。
こちらは「萩」ではなく「樅ノ木」。
歌舞伎では悪役の原田甲斐が主人公で、忠臣として描かれている。
庭にある樅の巨木に自身の信念をダブらせている題名だ。映画では、原田甲斐を嵐寛寿郎が演じた「危し! 伊達六十二万石」がある。
こちらは、いかにも緊迫した伊達騒動がイメージできる題名だ。