「へうげもの」 第1巻
”下剋上の戦国時代。立身出世を目指しながら、茶の湯と物欲に魂を奪われた男がいた。
織田信長の家臣・古田左介(のちの古田織部)である。
希代の天才・信長に世界性を、茶の湯の革新者・千宗易(利休)には深遠な精神性を学び、「へうげもの」への道をひた走る。
生か死か。武か数奇か。それが問題だ!!”
「へうげもの」とは、茶人古田織部の造ったあの「織部焼」が、当時「瓢軽(ひょうげ)」と評されたことから作者が名づけたもの。
山田芳裕の人気コミック「へうげもの」(1〜3巻既刊。モーニング連載中)は、信長・秀吉・光秀・古田織部とともに「大名物」がもうひとつの主役である。
物語は、信長を裏切った松永久秀が、信長が所望した大名物「平グモの茶釜」を胸に抱いて壮絶な爆死を遂げる物語から始まる。
そして、荒木村重が所有する「荒木高麗」染付茶碗
九州博多の豪商がもつ肩衡茶入「楢柴」
信長がもつ肩衡茶入「初花」と「新田」
福与城主の説得に使用した高麗井戸茶碗「防弾柿」
信長が公家たちに披露する「松島茶壷」「珠光茶碗」「蕪無花入」「宗達平釜」等々
第1巻だけでもこれだけの大名物が登場する。
これら大名物が、権威の象徴あるいは恩賞や和睦条件に使われ、信長の世界性をいっそう鮮明にしていく。
千宗易(利休)のたった三畳の茶室に初めてに招かれたとき、古田織部が壮大なる宇宙空間を見る場面など、この時代の「わび文化」の核心をも見事に表現している。