最近読んだ本のなかで抜群の面白さ。
利休が切腹する日に始まり、彼を取巻く人物(秀吉、家康、三成、妻、長次郎、へうげもの織部、等々)が時間を遡って語る非凡な構成。
そして、19歳の時まで遡って、謎の美女と香炉の秘密が明らかに。当時大ブームとなった茶の湯自体の効用、茶器のもつ効用が解き明かされていて興味深いし、茶の湯の楽しみ方もたっぷり伝授される。俗物たる秀吉が、「天下にただ一人、あの男だけがわしを認めようとせぬ。」と言わしめた利休の泰然とした姿勢が共感を呼ぶ。利休を描いた映画はいくつかあるが、やはり勅使河原宏監督の「利休」(1989年)が忘れられない。
野上彌生子原作の小説「秀吉と利休」の映画化で、前衛芸術家の赤瀬川原平が初めて脚本に参加したことで、”利休=前衛芸術家”の視点が新鮮だった。
利休を演じた三國連太郎、秀吉を演じた山崎努の二人が役にぴたりはまっていた。