2014年カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作。
監督は、カナダ出身、弱冠26歳のグザヴィエ・ドラン。
過去4監督作品とも次々と映画祭にて賞賛の声を浴び、俳優としてのキャリアも長く「美しき天才」と称される若き才人。
私はドラン監督作を観るのは初めてだが、その才能に脱帽。
説明を避けた語り口、みずみずしい映像、細やかな人物描写、絶妙な音楽の使い方、どれをとっても感嘆してしまう。
ギリギリの生活をおくるシングルマザーのダイアン(アンヌ・ドルヴァル)のところに、多動性障害を抱える息子スティーヴ(アントワン=オリヴィエ・ピロン)が矯正施設から帰ってくる。
スティーヴと意気投合した隣家のカイラ(スザンヌ・クレマン)は彼の家庭教師をすることとなり、3人が家族のように平和に過ごすが・・。
<以下ネタバレ注意。ラストに触れています。>
この映画で最も特徴的なことは、1:1のアスペクト比という正方形の画面。
母と息子の息詰まる生活、社会の閉塞感、こういった状況を表現するに最も適した画面サイズだ。
そして、その閉塞感が解放されたとき、真四角な画面が、横に長く広がっていく。このような感動的な場面を用意していたとは驚くばかり。
しかし、それも長くは続かない。もとの正方形の画面に戻る。
母と息子の再生物語は、スティーヴの自由への執着を表現するかのような象徴的場面で終わる。
いろいろな解釈も出来そうだが、”生きぬいて、あの幸福感をもう一度!”と私は受け止めた鮮烈のラストシーン。
今年これまでのマイ・ベスト映画。