映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「罪の手ざわり」

中国のジャ・ジャンクー監督が、「長江哀歌」以来7年ぶりに手がけた作品。
タイトルで、「オフィス北野」のロゴがでてきて、日本との合作映画とわかる。中国資本だけでは製作不可能な題材であろう。良き映画造りに参画した。

中国で実際に起きた事件から着想を得て作られた4人の物語。

村の共同所有だった炭鉱をめぐる汚職事件に怒る中年男、
出稼ぎだと偽り強盗を繰り返す農村の男、
しつこく迫る客を切りつけてしまう女、
ナイトクラブのダンサーとの恋に悩む貧しい若者、
こんな男女の貧困と暴力を荒々しくも繊細に描く。

決して悪人ではなく、ごく普通の人々だからこそ浮かび上がる急激に変化していく中国現代社会。
そして、山西省重慶湖北省広東省の4つの土地が荒涼とした風景とあいまって人々の空虚感をも表現しているようだ。
何度か路上で演じられている京劇の舞台が悪をさばくヒーローというのも象徴的である。

「長江哀歌」のチャオ・タオをはじめ、個性的な俳優陣がドラマを息づかせていて、見応え十分。