映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

通し狂言 仮名手本忠臣蔵


江戸時代の歌舞伎上演は、早朝から夕方までひとつの演目を初めから終わりまで<通し>で上演されたという。

明治中期以降から、昼・夜の二部制度となり、時間内に作品総てを上演できなくなったので、人気のある場面のみ上演されることが普通となった。

今月の歌舞伎座は「仮名手本忠臣蔵」を昼・夜<通し>で上演。

<通し>といっても、上演時間は上限8時間なので、作品総ては上演できない。
今回上演は次の通りで、最近の<通し>定番演目となっている。
昼の部:大序(一段目)、三段目、四段目、道行
夜の部:五段目、六段目、七段目、十一段目

昼の部を観てきた。

大序は、まず<口上人形>が登場し、配役を紹介する。
重要な配役を披露するときは「エヘンエヘン」という咳払いがあって注意をひきつけると、観客からひときわ大きな拍手。
もう舞台と観客がひとつだ。

ゆっくりゆっくりと幕が引かれると、舞台の人物はみな首をたらして眼を閉じた<人形身>で、竹本の紹介語りで動き出すという演出。

高師直吉良上野介)の「いじめ」、判官(浅野内匠頭)妻への横恋慕、わいろの受領、という事件の発端となる高師直の悪役ぶりが見事に、儀式的に示めされる。
うまい序幕。

おめあての四段目・判官切腹の場。
判官(菊五郎)が九寸五分の小刀を腹に突き立てたとき、国元家老の大星由良之助(幸四郎)が駆けつける。
判官が「この九寸五分は、汝へのかたみ・・・」と耳打ちする件で、敵を討ってくれという意味を込める二度目の「かた」は「かた」とわかるように喋る。
この喋り方で芝居のよしあしが決まる名場面では、観客も聞き漏らすまいと、水を打ったように息を止めて聴き入っていた。

芝居の醍醐味をたっぷりと味わい、本当にこの「仮名手本忠臣蔵」こそ歌舞伎の代表作だと、つくづく思う。

名舞台を観れる幸せを実感した一日だった。