映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

長部日出雄著「天才監督木下恵介」




長部日出雄の「天才監督木下恵介」(新潮社)を読んだ。

昨年松竹から木下恵介の全49作を収めたDVDーBOXがデジタルリマスター版で発売され、再発見の機運が高まっているとき、時期を得た出版である。

国策映画を子を思う母の姿一点にしぼった「陸軍」(1944年)、日本最初の総天然色映画「カルメン故郷に帰る」(51年)を撮影する苦労、「楢山節考」(58年)や「笛吹川」(60年)の実験精神など、各エピソードをその時代背景とともに的確に捉えて、まさに天才監督と言うにふさわしい監督論となっている。

私が木下恵介の名前を知ったのは、「喜びも悲しみも幾歳月」(57年)を観たときだ。つつましい灯台守夫妻の半生に涙した。その後、名画座で「二十四の瞳」(54年)を観て、すごい反戦映画を作る監督だと驚いた。

今わが国が失いつつある純粋で、正直で、善良な人々が登場する世界。木下恵介再発見の満足。