映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「小さいおうち」

原作を読んで感銘したので公開が待ち遠しかった。

東京郊外、赤い屋根の家に女中としてきたタキが見た若奥様の秘密は・・
主人公タキの「複雑な心情」を見つめる映画なので、登場する役者の顔が重要で演技のアンサンブルが要求されるが、見事な出来で味わい深い映画に仕上がっていた。

昭和初期、舞台である平井家のなかでは、不況であっても苦労もなく、いたって平穏、というのに驚く。
あんがいそんなものだったのか。
だが、次第に戦争の足音が・・

平井家の旦那様を演じる片岡孝太郎は、まさに昭和初期の顔。
昭和初期の日本映画ホームドラマでの夫役として有名な斎藤達雄の面影がダブる。
片岡孝太郎は「終戦のエンペラー」で昭和天皇を演じた。歌舞伎役者。)

若奥様・時子を演じる松たか子の顔つきは、昭和1初期の顔ではないのだが、さすが着物を着て足袋をはくとピタリはまる。
旦那様の若い部下板倉(吉岡秀隆)に会いに行くときに、帯を締めて鏡台を見る一瞬に女の色気が滲みでた。
当時まだ姦通罪があったはずだが、それを覚悟の顔つき。

若き日のタキを演じる黒木華は、その「クラシックな顔立ち」が決め手となり起用されたという。なるほど。
戦況悪化で田舎の生家に戻される時、幸福な結婚を望む時子に対して、”結婚はしない、必ず平井家に戻って来る”と言う覚悟の顔つきで、時子への熱い想いを静かにぶつけていた。

タキの老後をかまう健史を演じる妻夫木聡は、平成顔なので現代に登場する。
昭和と平成を交錯して描くにピタリ顔。

なお、最後のナレーションで、戦争に突き進んだ日本人へのメッセージを静かに語っているのが山田洋次監督の良心。