映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「42 世界を変えた男」

全球団が永久欠番にしている背番号42、黒人初のメジャーリーガーであるジャッキー・ロビンソンの事実に基づいて作られた伝記映画。

野球映画といえば、「がんばれ! ベアーズ」「ナチュラル」「メジャーリーグ」「プリティ・リーグ 」「オールド・ルーキー」・・
実力なき選手が立ち上がったり、弱小チームが勝ち上がったりして、最後には試合で大逆転し大喝采、というのが定番。
だが、この映画にそれを期待すると、足元をすくわれる。
この映画の題材からして試合を見せ場にして、選手に大喝采するという脚本がいくらでも書けると思うのだが、あえてそうしなかったところが、この映画の品格なのだ。

主人公はジャッキー・ロビンソンチャドウィック・ボーズマン)だが、描きたいのはブルックリン・ドジャースのオーナーであるナーブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)のほうだ。
野球界の差別体質改革を求め黒人選手を起用し、ジャッキーには辛抱強く”やり返さない勇気を持つこと”を諭す。
野球を愛する情熱をじわり滲ませるハリソン・フォードが、実にいい味。

そして、40年代の球場やプレイスタイルを丹念に再現していることに、眼をみはる。
その時代の雰囲気を正確に再現することによって偉大な選手と球団オーナーを讃えようとする姿勢が貫かれている。
逆転満塁ホームラン場面で終わらせる野球映画でなく、カタルシスを排した脚本に”勇気を持つ”製作姿勢に感動させられた。

監督・脚本は、「L.A.コンフィデンシャル」の脚本でアカデミー脚色賞受賞歴のあるブライアン・ヘルゲランド