映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「許されざる者」 

ハリウッド大手のワーナーが、日本映画の製作配給に乗り出しているとはいえ、20年も前のクリント・イーストウッド監督傑作西部劇が、まさか日本でリメイクされるとは!
李相日監督による「日本版 許されざる者」は、オリジナルを観た時と同じ感動を再び体験することができる本年屈指の気概ある作品。
ワンカットも疎かにしない丁寧な作画、緊張感で最後まで画面に釘付け。
恐るべしリメイク。

主人公ガンマンのイーストウッド役に渡辺謙、相棒モーガン・フリーマン役に柄本明、保安官ジーン・ハックマン役に佐藤浩市、キッドのジェームズ・ウールベット役を柳楽優弥が演じ、いずれもが渾身の演技で魅せる。

明治初期の北海道開拓時代を舞台に設定していることが成功した要因だと思う。
刀から銃の時代、官軍と武士、薩長の確執、屯田兵の実態など北海道開拓時代の様子が随所に描写されている。十兵衛の妻や五郎がアイヌ人の設定で、特に屯田兵が行うアイヌ差別や悲しみを切りっとっていて、当時の時代背景を生かしドラマに厚みがでた。

北海道の大自然を背景に馬で進むカメラは美しく崇高で、素晴らしい。
セルジオとドンに捧げた”オリジナル版の西部劇の雰囲気そのままに、リメイクとしての敬意も払っている。

オリジナル版と違うラストは、こちらリメイク版のほうに軍配をあげたい。

監督の前作「悪人」と同じように、人間の業の深さや痛々しさが迫る作風なので好き嫌いがありそうだが、「悪人」に感動したひとには必見の作品といえる。